相続時精算課税制度を使って一度に多くの財産を贈与する方法
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相続・継承
人から財産の贈与を受けたら、国に納めなければならない贈与税。
年間110万円以内の贈与であれば基本的に税金はかかりませんが、住宅、土地、アパート、マンションといった不動産や株を贈与したい場合には、一般的に金額も過大になるため贈与税の申告が必要になります。
そこで今回は、贈与税の負担なく、一度に多くの財産を贈与することができる「相続時精算課税制度」をご紹介します。
※ 本記事は平成29年3月時点の法令に基づいて作成しています。
相続時精算課税制度とは
1月1日から12月31日までの1年間の贈与額が110万円を超えた場合に税金がかかる暦年課税制度に対し、相続時精算課税制度とは「通算して2,500万円までの贈与を税負担なしでおこなえる制度」です。
一般的に住宅や土地といった不動産の贈与では、(場所や年数などの条件により資産価値は異なりますが)110万円を超えてしまう可能性が十分にありえます。
このような場合に相続時精算課税制度を活用すれば、税金の負担なく価値の高い財産を贈与をすることができます。
相続時精算課税制度を利用できるのはこんな人
相続時精算課税制度を利用するには、「贈与者(財産をあげる人)は60歳以上の直系尊属、受贈者(財産をもらう人)は20歳以上」という条件があります。まずは、この条件に当てはまるかどうかチェックしてみましょう。
条件1:「贈与者は、「血の繋がった両親か祖父母」で、年齢が60歳以上である」
(「直系尊属」とは血の繋がった両親や祖父母などご先祖様も含め、自分よりも上の人たちのことをいいます。)
条件2:「受贈者の年齢が20歳以上である」
条件3:「一定の期日までに届出をすること」
上記であげた年齢は「贈与をした年の1月1日現在での年齢」となります。
たとえば、平成28年3月31日に父親から200万円の現金をもらったとします。
この時、平成28年1月1日において、父親が60歳以上、自分が20歳以上であれば相続時精算課税制度を利用することができるということになります。
相続時精算課税制度を活用するメリット
相続時精算課税制度を活用する2つのメリットを説明します。
相続財産の金額次第では、相続時にも税負担の必要がなくなる場合もあります。
メリットその1
2,500万円分の非課税枠を使って、一度に多額贈与が可能
相続時精算課税制度は、通算して2,500万円分の贈与税の非課税枠があるため、生前に多額の贈与をすることができます。
もちろん、不動産、株、現金といった財産の種類に制限はありません。また、一度に2,500万円を贈与しなくても、総額2,500万円以内であれば複数回に分けて贈与することができます。
メリットその2
相続財産の総額が基礎控除額以下なら、贈与時・相続時ともに税負担がゼロに
相続時精算課税制度は、本来贈与の時にかかる税金を相続の時にまとめて精算・納税してくださいという仕組みになっています。
そのため、相続税は、生前に贈与された財産と相続財産を足したもので計算します。この遺産の総額が相続税を計算する時の基準となる「基礎控除額」を下回った場合には、贈与時・相続時ともに税負担は必要ありません。
相続時精算課税制度を上手に活用すれば、金額の大きな財産を早急に移転することが可能になります。
相続時精算課税制度を使った計算事例
ここからは相続税の基礎控除額の計算式と具体例をご紹介していきます。
家族構成が、本人、妻、長男、長女の4人家族だったと仮定し、生前に、長男、長女へそれぞれ500万円の現金を贈与していたとします。
この時、相続時精算課税制度を適用すると以下のようになります。
本人から長男に対する500万円の贈与
500万円-2,500万円=-2,000万円(贈与税の非課税枠残り)
本人から長女に対する500万円の贈与
500万円-2,500万円=-2,000万円(贈与税の非課税枠残り)
相続時精算課税制度は、本人から長男、本人から長女へといったように「個別」に多くの財産を一度に贈与できる大きな特徴があります。
そして、将来において本人が死亡した場合には、妻、長男、長女の3人で本人の遺産を相続する流れになります。この場合における相続税の基礎控除額は以下のとおりです。
相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×3人=法定相続人の数)
計算結果が4,800万円となり、生前に贈与した長男への500万円と長女への500万円を差し引いた3,800万円以内に本人の遺産金額が収まっていれば、この一家が負担する相続税はなしという結果となります。
つまり、贈与時・相続時どちらも税金を支払うことなく、早急かつ有効に財産を移転することができるのです。
まとめ
今回は、年収・所得に関わらず、幅広い世帯で活用いただける相続時精算課税制度について簡単に解説しました。
具体例で挙げたようにこの制度は、長男、長女などそれぞれ個別に贈与することができる仕組みとなっています。偏った贈与をしてしまいますと後々トラブルの原因になってしまうことも考慮しなければならないポイントです。
(なお、相続時精算課税制度の利用をお考えの際は、事前に専門家である税理士や税務署へ詳細を必ずご確認ください。)
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