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年金の「繰上げ受給」「繰上げ受給」とは?FPの答えは「繰下げ需給が得!」損得は変わるのか?

公開日: : 最終更新日:2019/04/16 日常生活の節約, 社会保障や公的保険

老後の生活を支えてくれる強い味方となるのが年金ですが、これから60歳になる人が悩むのがいつから貰うかです。
年金受給開始年齢前に年金受給することを「繰上げ受給」、逆に遅らせることを「繰下げ受給」と言います。

今回は、この繰上げ受給と繰下げ受給について解説とどちらが得するのかについてみていきたいと思います。
まずは簡単に年金の仕組みから理解を深めていきましょう。

年金の仕組み

ご存知の通り、年金には国民年金と厚生年金があります。
国民年金は基礎年金と呼ばれるもので、20歳以上60歳未満の国民全員が加入し、基本的には65歳から老齢基礎年金として給付されます。

厚生年金は国民年金に上乗せされて給付される年金です。男性は昭和36年4月2日以降、女性は昭和41年4月2日以降に生まれた方は65歳から老齢厚生年金が給付されます。

昭和61年4月に法改正が行われ、老齢基礎年金、老齢厚生年金の支給開始が65歳と決まりました。ただ、それまで60歳で支給開始だった老齢厚生年金をいきなり65歳にしてしまうと、人生設計上困る人が増えてしまいます。

そのため、年齢に応じて段階的に厚生年金の支給開始時期を上げていくことにしました。その前後の法改正の影響で、段階には男女差が出ていますが、厚生年金の支給開始年齢は日本年金機構の一覧表を見ていただければわかりやすいと思います。
厚生年金支給開始年齢について(PDF / 日本年金機構より)

65歳前から貰える年金を特別支給の老齢厚生年金と言います。一覧を見ていただくと、定額部分と報酬比例部分に分かれています。

そして65歳から定額部分が老齢基礎年金となり、報酬比例部分が老齢厚生年金となります。現在の年金は、基礎年金に厚生年金が上乗せされて給付される仕組みなので、このような構造を建物に見立てて一階建て、二階建てと表現されています。

企業年金などがある場合は三階建てとなり、基礎年金と厚生年金に上乗せされて給付されます。これから年金を受け取る方は、まずご自身の年齢からどのように年金が受け取れるのかを確認していただけると、この後の説明が分かりやすくなります。

また、この後に繰上げ受給、繰下げ受給の話をしますが、現行の制度では年金は60〜70歳で受給を開始する形になっています。現在も高齢化社会対策として70歳を超えての受給も出来るように検討がされています。
年金受給前には年金に関する法改正にも注意して下さい。

年金受け取りの繰上げ受給とは

繰上げ受給についてみていきましょう。
繰上げ受給とは、年金受給開始前に年金を受給すること言います。繰上げ受給には全部繰上げと一部繰上げがありますが、一部繰上げが利用出来る人は特別支給の老齢厚生年金で定額部分がある人だけです。

これから年金を受給する人は報酬比例部分のみになりますので、全部繰上げしか利用出来ません。
全部繰上げとは、その名の通り老齢厚生年金と老齢厚生年金全部繰上げることです(報酬比例部分がある方は、報酬比例部分と老齢基礎年金全部が繰上げになります。)

報酬比例部分がある人は、その部分のみ65歳前から受給出来ますが、厚生年金の期間が短い人は金額がかなり低くなります。早い時期に少しでも早く資金が欲しい等の理由で利用出来るのが「繰上げ受給」です。

繰上げ受給は60歳から利用できます。しかし、早く支給される分、デメリットもあります。
そのメリット、デメリットをまとめてみました。

年金繰上げ受給のメリット

・すぐにお金が手に入る
・一定の年齢までは、本来の受給より総額が多くなる

デ年金繰上げ受給のメリット

・1ヶ月早めるごとに0.5%減額される
・一旦繰上げ請求をすると取消が出来ない
・老齢厚生年金のみ繰上げは出来ない
・寡婦年金の受給権がなくなる
・障害基礎年金が請求できない
・遺族年金発生後に損をする可能性がある

メリットについては後ほど詳しく説明しますが、すぐにお金が貰えて、一定の年齢までは本来の受給総額より多くなります。

しかし、1ヶ月早めるごとに0.5%の減額がされ、一度請求すると取消が出来ず一生続きます。また、繰上げる際は老齢厚生年金と老齢基礎年金両方の繰上げが必要となり、その他の受給権がなくなる可能性があります。

例えば障害年金は障害の等級によって金額が異なりますが、最低限の受給金額と老齢基礎年金の満額と同等なので、等級によっては障害年金の方が受給金額が高い事があります。早く受け取れる分、実はデメリットが多いのが繰上げ受給です

年金受け取りの繰下げ受給とは

繰下げ受給とは、年金受給開始時期を遅らせる事を言います。1ヶ月遅らせるごとに0.7%増額され、70歳まで5年遅らせると最大で42%増額されます。

繰下げ受給の場合、老齢厚生年金、老齢基礎年金どちらか一方を繰下げるか、両方繰下げるか選ぶことが出来ます。また、特別支給の老齢厚生年金は繰下げ受給が出来ないので、受給権が発生したらすぐに請求手続きをしましょう。

繰下げ受給にもメリット、デメリットがあります。

年金繰下げ受給のメリット

・1ヶ月遅らせるごとに0.7%増額される
・増額された年金が一生涯続く

年金繰下げ受給のデメリット

・所得額が増えることで所得税、社会保険料が上がる
・遺族厚生年金は増額されない
・年金のない期間が長くなる

一番のメリットは年金額の増額です。そして、増額された金額が一生涯続きます。
デメリットは、所得額が増える事で所得税や社会保険料が増える事です。つまり、最大42%年金額は増額されても、単純に42%手取り額が増えるわけではないという事です。

また、遺族厚生年金は繰下げ受給しても増額されません。
例えば繰下げ受給をした夫が亡くなった場合、遺族厚生年金は増額前の金額で計算されます。妻に少しでも多くの年金を残したいという事には使えないので注意が必要です。

他には、受給を遅らせる分、年金が貰えない期間が増えます。その期間のマネープランやキャリアプランをしっかり考えないといけません。

繰上げ受給と繰下げ受給、どっちが得するか?

現在のところ繰下げ受給利用者は2%程度なのに対し、繰上げ受給利用者は30%程度もいるそうです。
年金不安というのもあると思いますが、まずきちんとメリットとデメリットを確認し、さらに損益分岐点を知る必要があります。

損益分岐点とは、どこまでが得で、どこからが損になるかを表したものです。
繰上げ受給の場合は、繰上げ受給した時から16年8ヶ月が損益分岐点です。

例えば、老齢厚生年金と老齢基礎年金を65歳から受け取れる人がいたとします。この人が60歳で繰上げ受給すれば、76歳8ヶ月までは65歳から受給するより総額が多くなります。そして、76歳9ヶ月以降は65歳から受給した方が総額が多くなります。

繰下げ受給をシュミレーションをしてみると、繰り下げ受給で支給額が42%増額になった人の受け取る累計金額が、65歳からもらい始めた人の累計金額を超えるのは、81歳10ヵ月のときです。貰い方によって異なってくるので、どの時点で受給するのが良いかキチンとシュミレーションをする必要があります。

日本は世界でもトップの長寿国です。
2017年の日本人の平均寿命は女性が87・26歳、男性が81・09歳です。これは今後伸びる可能性が高く、一部のデータでは2007年に生まれた子は50%の確率で100歳を超えると出ています。

公的年金は生きている間一生貰える終身年金です。このデータからも「年金は繰り下げ需給のほうが得」と個人的には考えており、可能な限り「繰下げ受給」を利用する事をオススメします。

ただ、長生きのリスクに備えるには繰下げ受給が得ですが、その他の収入、キャリアプラン、資産などによって異なります。
また、受給条件などにも関わってきますので一度年金事務所で相談し、理解をすることが大切です。
いくつかシュミレーションも行い、ライフプランに合わせたものを見つけて下さい。

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