老後生活に資金はいくら必要?FPが教えるお金の準備マニュアル
あなたは老後の生活に不安を感じていますか?
生命保険文化センターが行った意識調査によると、この質問に「不安がある」と答えた人が約86%。実に多くの人が老後生活に不安を抱えていることがわかりました。
そこで本記事では、CFP認定者である筆者が「老後の不安解消します!お金の準備マニュアル」と題し、老後にかかる生活費や受け取れる年金の目安から老後資金の準備方法まで幅広く紹介・解説していきます。
老後の生活にかかるお金はどのくらい?
まずは、老後の生活にはどのくらいお金がかかるのかを大まかに把握していきましょう。
ただし、これからご紹介するデータは家計調査の平均値であるため鵜呑みは厳禁です。あくまでも目安として理解しておきましょう。
無職世帯の1ヶ月あたりの生活費と内訳
食費 69,478円
住居費 13,769円
水道光熱費 25,429円
家具・家事用品 8,141円
被服及び履物 5,997円
保健医療 15,354円
交通・通信 28,795円
教育 753円
教養娯楽 26,935円
交際費 29,255円
その他 29,574円
税金・社会保険料 14,043円
合計 267,523円
出典 総務省 平成26年度家計調査より
上記は、夫婦2人で年金生活をしている場合の1ヶ月の生活費をイメージしてください。
お住まいの地域や生活水準によって感じ方はさまざまですが、たとえば本記事を執筆している私は、東北在住ですが、家計調査の数字と比較して水道光熱費がもう少し多くかかると感じる一方で、食材費は支出金額が多すぎ、住居費は支出金額が少なすぎ、などと感じます。
こちらを参考にしながら、現在のご自身の生活費や今後の生活設計を考慮し、年金生活が始まる年齢に達した時にどの支出がどのくらいかかりそうなのか、ぜひ一度シミュレーションしておかれることをおすすめします。
老後の生活資金「公的年金」はいくらもらえる?
次に、老後生活における収入について考えます。
多くの方の収入のメインとなるのは65歳から受け取る公的年金ではないでしょうか。
実際の年金額は、20歳から60歳までの間に納めた国民年金保険料のほか、会社員の方の場合、給料や賞与(ボーナス)から天引きされている厚生年金保険料に基づいて決定されます。
たとえば20歳から60歳までの40年間国民年金保険料を滞りなく納め、平均30万円の給料で30年間会社へ勤務していた場合、支給される公的年金の金額は、「1年間で約140万円」程度となっています(平成28年12月現在)。
単純計算すると1ヶ月あたり約11万6600円です。年金の支給日は「偶数月の15日」に2ヶ月分まとめて支給されるため、1ヶ月分の生活費を貯蓄などで確実にまかなうための資力が必要になります。
そもそも国民年金をきちんと納め、長年に渡って厚生年金保険料を納め続けたにも関わらず、1ヶ月あたりたったの11万6600円ではせつない気持ちになってしまいますがいかがでしょうか。
現実問題として余裕ある老後を迎えるためには、老後の生活資金は自分で準備する時代になっていると言えそうです。
「公的年金」にも税金がかかります!
給料や賞与などの所得に対してかかる所得税ですが、65歳から受け取る公的年金も「雑所得」として税金が課される仕組みとなっていることはご存知でしょうか。
以下では、65歳以上の方の年金にかかる税金の具体的な計算例をご紹介します。
公的年金の雑所得速算表
65歳以上で公的年金等の収入が
120万0001円から329万9999円まで 控除割合100% 控除額120万円
330万円から409万9999まで 控除割合 75% 控除額37.5万円
410万円から769万9999まで 控除割合 85% 控除額78.5万円
770万円以上 控除割合95% 控除額155.5万円
65歳以上の場合、公的年金等の収入が120万円までなら税金はかかりません。
さらに、1年間の収入が公的年金のみの場合、基礎控除分(38万円)も差し引くことができるため、158万円まで所得税がかかることはありません。
公的年金にかかる税金シミュレーション
1年間の公的年金の収入が200万円の場合でシミュレーションしてみます。
上記速算表の「120万0001円から329万9999円まで 控除割合100% 控除額120万円」に該当することから以下の計算式で雑所得の金額を求めることになります。
200万円×100%-120万円=80万円(雑所得)
この雑所得80万円から基礎控除38万円を差し引いた42万円に対して税金がかかることになります。所得税の税率が5%としますと、納めるべき金額は21,000円(42万円×5%)となります。
配偶者控除で税負担が軽くなる!
夫婦で年金生活をしていて、奥さんの方が旦那さんよりも公的年金の収入が少ない場合、奥さんを配偶者控除の対象とすれば税金の負担をさらに軽減させることできます。
先程の例で言うと、以下のように納税金額が変化します。
80万円(雑所得)-38万円(配偶者控除)-38万円(基礎控除)=4万円
4万円×5%=2,000円
配偶者控除が適用できたことで、納税金額が2,000円となり、結果19,000円も節税できたことになります。
このように知っていれば納税負担を軽くできるケースもあるため、それなりの年金収入になる場合は一度、税理士やファイナンシャルプランナー(FP)へ相談してみるのもよいでしょう。
老後の健康保険はどうなる?
老後(定年退職後)は健康面でもさまざまな不安を抱える方が増えるものです。そこで大切なのが老後の健康保険をどうするか、ということです。
今までは会社の健康保険に加入していた方も、老後は3つの選択肢から選ぶことになります。
選択肢その1 国民健康保険に加入する(お金の負担あり)
国民健康保険料(税)を個々に負担する必要があります。
また、会社員の夫が定年退職を迎え国民健康保険に加入した場合、扶養の妻がいたらその妻の分も国民健康保険料(税)を負担する必要があります。
実際に負担する金額は、一律ではなく世帯によって異なります。
選択肢その2 健康保険の任意継続を利用する(お金の負担あり)
定年退職後も任意継続といって最長2年間は、今までの健康保険に引き続き加入することができます。
ただし、現役の時のように健康保険料の負担は半分ではなく、「全額自己負担」しなければならない点は要注意です。
また、任意継続をしている状態で、保険料の支払いを忘れてしまうと「即脱退」扱いをされてしまうことから、保険料の支払いには細心の注意を払いましょう。
さらに、健康保険の強みである「傷病手当金」は、任意継続で加入した人には適用されないため、基本的に、先に解説した国民健康保険と任意継続で加入した健康保険は、「保障が変わらない」と思って差し支えありません。
そのため、どちらか迷った場合は保険料の安さで決めてよいと思います。一般に任意継続をした方が得だと考えられる方は、会社の役員などをしていて給料の金額がとても多い方が当てはまります。一般的な給料で定年退職を迎えた場合は、任意継続ではなく国民健康保険に加入するのが得策と考えられます。
選択肢その3 扶養親族になる(お金の負担なし)
この方法は一部の人に限られてしまいますが、たとえば、親子で同居していてその子が健康保険に加入している場合、定年退職後に「被扶養者」となることで、お金の負担なしで健康保険に加入することができます。可能であれば率先して活用するべき方法であると言えます。
家計を見直して老後の生活資金を作ろう!
「老後の生活資金は自分で準備する時代」と言われると、収入を増やすことを考えがちですが、まずは家計の支出を見直すことから始めてみましょう。出て行くお金を少しでも減らすことこそ、最も効率的にお金を捻出する方法です。
特に、大きな割合を占める「住居費」や「保険料」は、無駄を削減することで高い効果を期待できます。
STEP1 住居費の見直し
住居費の見直しで効果が大きいのは、何と言っても住宅ローンの借り換えです。
平成28年2月に日本銀行がマイナス金利政策を施行したことによって、住宅ローンの金利は「歴史的低金利時代に突入した」とまで言われました。
住宅ローンの借り換えには諸費用(事務手数料や登記費用)がかかりますが、トータル面で考えれば総返済金額を減らせるなど、一定の効果があります。
何よりも老後に生活資金を捻出しながら、住宅ローンの返済をするという家計にとっての大きな負担を回避する確実な方法と言えます。
なお、住宅ローンの借り換えを検討するにあたっては以下の3つの条件を満たしているかチェックしてみましょう。
金利が低いといった理由だけで住宅ローンの借り換えをすると、かえって逆効果になる場合もあります。
・ 住宅ローンの返済期間が「10年以上」あること
・ 住宅ローンの残債金額が「1,000万円以上」あること
・ 現在借りている住宅ローンの金利と借り換えする予定の金利差が「1%以上」あること
実務上では、上記3つにあてはまらなくともメリットが得られる場合もあります。
詳しくは、専門のファイナンシャルプランナーなどへ相談し、住宅ローンの比較検討してもらうとよいでしょう。
STEP2 生命保険の見直し
一般に生命保険にかかるお金は、住居費に次いで2番目に大きい支出といわれています。
よくわからず何となく加入した場合や友人・知人・親戚などの付き合いで加入した場合などは特に要注意です。
保障が良いものでなかったり、無駄な保障が付いていたりなど、結果として無駄な保険料を支払っている可能性が高いです。
無駄を見直した分を他の必要なところに充てることもできますので、できる限り早急に対応しましょう。
また、生命保険におきましてもマイナス金利政策の影響が大きく、従来、多くの生命保険会社が販売していた「終身保険」や老後の生活資金を貯めるための「個人年金保険」の売り止めが相次ぎ、生命保険を活用した老後の生活資金作りは極めて困難な時代となっているのが現状です。
そこで私がおすすめしたいのが次項でご紹介する確定拠出年金です。
将来の自分年金づくりに!確定拠出年金
確定拠出年金は、将来の自分年金を自分で作る方法のことをいいます。
まずは、国民年金の運用をイメージしてみてください。
私たちが支払った国民年金保険料は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が投資し運用しており、自分たちで運用の仕方を決めることができませんね。
確定拠出年金は、これとは逆に自分で支払ったお金の運用方法を自分で決めてお金を増やす方法で損得はすべて自己責任になります。
節税のメリットが手厚く、老後資金を確保する意味で考えますと、投資信託やNISAなどに比べましても群を抜いて有利な制度です。
詳細につきましては、本記事の最後に表記したリンク先をご覧ください。
まとめ
老後生活の不安を解消し、豊かな老後を送るためにはそれなりの計画性と準備が必要なことがおわかりいただけましたでしょうか。家計を見直して無駄を省き、積立貯蓄や確定拠出年金などを利用した効率的な老後資金作りを早めに考えておくことが、老後を自分らしく楽しむコツと言えるでしょう。
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