相続税で支払う金額はいくら?金額を確認する4つの手順
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最終更新日:2017/04/11
税金や節税
平成27年(2015年)1月1日より相続税の基礎控除額が大幅に引き下げられてから、早2年が経ちました。
以前までは相続税と無縁の世帯が全国的に約90%超と、いわゆる「富裕層」に対して課税されていた相続税でしたが、平成27年1月1日以降は一般の世帯においても相続税を納めるケースが出てきました。
相続税は、10%~55%と大きく8区分に税率が分類され、仮に相続税を納める必要性が生じた場合の税率が最も低い10%であったとしても高額になります。
このような背景を踏まえ今回は、将来あなたが相続税を払わなければならないか簡単に確認する方法を4つの手順でわかりやすく解説していきたいと思います。
相続税の確認方法
ステップ1 資産の金額を計算する
相続税を払うかどうかの確認ではじめに行う手順は「資産金額の計算」です。
ここでいう「資産」とは具体的に以下に分類されます。
① 現金預金
② 不動産(土地・建物など)
③ 生命保険金(死亡保険金)
④ 退職金
⑤ 上場株式・公社債など
⑥ その他の財産
①現金預金
財布・金庫・引き出し・タンスなどに保管している現金をすべて含み、金融機関に預け入れしている預金や貯金・積立金などの性質を持ったもののすべてを総称して現金預金と言います。
加算する金額は、「保有している金額そのもの」の金額になります。
②不動産(土地・建物など)
不動産とは、保有の住宅における土地や家屋、それ以外に所有の土地や建物などをすべて含みます。
国税庁では相続税の計算をする際、これらの不動産に対する金額とは「時価」によるものとしていますが、ここでは「固定資産税納付書」に記載されている「評価額」を概算金額として使用します。
【固定資産税納付書】
毎年市区町村から送られてくる「固定資産税納付書」には課税するための根拠(評価額や税率など)が必ず記載されています。
納付書の中身を確認して「評価額」を確認しましょう。
■土地の評価額に注意■
相続税を計算する際、家屋(建物)は固定資産税納付書に書いてある「固定資産税評価額」が使用されますが、土地の場合は注意が必要です。
土地の相続税計算の際に妥当とされる金額
・ 路線価を基本とした相続税評価額
・ 不動産鑑定士による評価額
ここでは概算金額としておりますので、固定資産税評価額をそのまま用いて計算します。
③生命保険金(死亡保険金)
生命保険金と言っても、死亡や高度障害に陥った時に支払われる保険金や病気や入院をした時に支払われる保険金など、さまざまな性質の保険金があります。
その中で相続税に関わってくる保険金は、以下の3種類です。
・ 生命保険金(死亡保険金)
・ 個人年金保険
・ 生命保険契約に関する権利
この中でも、特に一般的な「生命保険金(死亡保険金)」について、もう少し詳しく解説していきたいと思います。
多くの皆さまは、万が一に備えて終身保険、定期保険、養老保険、収入保障保険などの死亡や高度障害により支払われる生命保険に加入していると思います。
そして原則として、この受け取った死亡保険金は相続税の課税対象となります。
生命保険の契約イメージは下記のとおりです。
保険契約者 (保険料負担者) ↓ ↓ |
被保険者 (保険対象となる人) ↓ ↓ |
保険金受取人 ↓ ↓ |
被相続人 (死亡した人) |
被相続人 (死亡した人) |
相続人 (配偶者や子どもなど) |
上記の契約は、最も標準的なパターンであり相続税の課税対象になります。
ただしこのような死亡保険金には「非課税枠」という措置が設けられています。非課税枠については「ステップ3 非課税金額を確認する」で詳しく解説していきます。
④退職金(死亡退職金)
退職金の規定がある会社などで在職中に病気や事故などで死亡した場合、就業規則や勤務年数などをふまえて死亡退職金が遺族へ支給されます。この退職金において「死亡から3年以内に支給されたもの」に対しては、原則として相続税の課税対象となります。
こちらも生命保険金(死亡保険金)と同様に「非課税枠」の措置が設けられていますので、こちらも「ステップ3 非課税金額を確認する」で詳しく解説していきます。
⑤上場株式・公社債など
死亡した人が保有していた上場株式や公社債などの金融商品を相続した場合も相続税の課税対象になります。
それぞれの金融商品によって評価の方法は異なりますが、これらの金融商品の金額は「証券会社から発行される残高報告書の金額」とするのが良いでしょう。
⑥その他の財産
その他の財産として、自動車や所得税の還付金なども相続税の課税対象になります。今回は、ここまで詳細に計算に加える必要はありませんが、予備知識として抑えておきましょう。
相続税の確認方法
ステップ2 負債の金額を確認する
次に負債の金額を確認していきます。
ここでいう負債とは「住宅ローンなどの借入金」「葬式費用」「お布施」などを指します。
借入金
死亡した人が抱えていた借入金は、相続した資産(財産)から差し引かれますが、具体的には以下のような借入金を指します。
・ 住宅ローンなど金融機関からの借入金
・ 友人・知人・会社・取引先などからの借入金
・ 消費者金融や信販会社などからの借入金
葬式費用、お布施など
葬儀費用やお布施などは、相続した資産(財産)から差し引くことができます。似たようなものでも葬式費用に含まれないものもありますので、含まれるもの、含まれないものを以下にまとめました。
葬式費用に含まれるもの | 葬式費用に含まれないもの |
・葬儀社へ支払った葬儀費用 ・通夜や葬式で会葬者に用意した食事費用 ・斎場に支払った費用 ・寺院へ支払ったお布施、戒名料、読経料 ・お手伝いに支払う寸志 |
・香典返し費用 ・墓地、墓石購入費用 ・「初七日以降」の法事費用 |
葬式費用に含まれるもので「領収書」がないものもいくつか存在します。
このような場合には、「支払日」「支払相手」「支払金額」などを正しくメモしておくことで葬式費用として認めてもらうことができます。
相続税の確認方法
ステップ3 非課税金額を確認する
生命保険金や死亡退職金には「非課税枠」があることは既に前述したとおりです。ここでは、これらの非課税枠の計算方法を解説します。
非課税枠はどちらも「法定相続人×500万円」となる
例えば、夫・妻・長男・長女・夫の母と5人家族だったと仮定し、不幸にも夫が働き盛りの年齢で亡くなってしまったとします。
この時の法定相続人を確定させなければなりませんが、この場合の法定相続人は、妻、長男、長女の3人になります。
つまり、「3人×500万円=1,500万円」が生命保険金、死亡退職金、それぞれの非課税枠ということになります。
法定相続人の相続順位は「民法」に準じますので、常に相続人となる配偶者及び子どもがいる場合は、その子が第1位順位の相続権利を獲得することになります。
長男、長女がいない場合には夫の母が相続権利を獲得します。
相続税の確認方法
ステップ4 基礎控除を確認する
最後に冒頭でも出た相続税の基礎控除額は以下の計算式で求めることになります。
前述の家族の例に当てはめてみましょう。
相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
基礎控除額は4,800万円になります。
まとめ
~相続税を払わなければならないかの判定と考察~
相続税を払わなければならないかの判定は以下のように行いますが、ここでは具体例で示した家族構成で解説していきます。
負債(ステップ2)+相続税非課税金額(ステップ3)
相続税基礎控除額(ステップ4)
事例にあげたケースですと、
資産-負債-相続税非課税金額≦相続税基礎控除額(4,800万円)
であれば相続税は課税されません。
スムーズに相続するために
今回は相続税の計算方法について解説をしました。
実際に相続する際には、法定相続人を確定させるため、死亡した人の「戸籍謄本」や「除籍謄本」を市区町村で取得します。これらの戸籍資料は簡単に説明しますと「死亡した人の生い立ち」です。
具体的には、誕生日出生届けを提出した人、結婚や離婚の日付や子どもの有無(誕生日も死亡日も)などが詳細に記載されており、この時「以前、離婚していた」「隠し子がいた」などといった事実を知ってしまうことがごく普通にあります。
解説のなかで例にあげた家族に、死亡した人と前妻の間に子がいた場合、顔を見たことも実際に会ったこともないとしても、前妻との子も法定相続人になります。つまり、妻や長男、長女は相続する取得分が少なくなる結果になってしまうのです。
相続手続きをスムーズに進行させるためには、双方の譲歩が決め手だと感じます。「相続できる前妻の子が相続放棄する」や「前妻の子に対して法定相続人であると割り切り相続させる」といった譲歩が泥沼化を防げると考えます。
とはいうものの、現実問題としては降って湧いたようなお金が入ってくることで「欲」が出るのが多いのが現状です。このような特殊事情がある場合には、相続税がかからないとしても、生前に相続対策を行っておく事が遺された家族に迷惑をかけないことにつながるのではないでしょうか。
事前にご自身で調べたり、ファイナンシャルプランナーを通じて知識を深めることで、よりよい人生設計のお役にたてればと思います。
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