病気で働けなくなったらどうする?高額療養費制度と傷病手当金の申請から受給まで
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社会保障や公的保険
今は健康に問題もなく働いているけれど、万が一大きな病気をして働けなくなったら?
こんなことを考え、不安に思う方も沢山いらっしゃると思います。
ケガや病気などのもしものために、民間の医療保険に加入されている方もいると思いますが、公的な制度の中にもいざというときにもらえるお金があることをご存知ですか?
今回は、医療費が高額になった場合に負担を軽くする【高額療養費制度】と、会社員の人が病気やケガで働けなくなった場合に生活を支える【傷病手当金】という制度を詳しく解説します。
公的制度を詳しく知り、民間の医療保険を検討する際の参考にしてください。
高額療養費制度とは
高額療養費制度とは、月初~月末までの1カ月間にかかった医療費が一定額を超えた場合に、超えた額が払い戻される制度です。自己負担額は、年齢や所得によってあらかじめ決められています。
▼自己負担額はこちらから確認できます
厚生労働省<高額療養費制度を利用される皆様へ>
医療費の自己負担額は通常3割(健康保険)ですが、入院や手術などで長期の療養が必要な場合は医療費が高額になることがあります。このような場合、1カ月にかかった医療費の自己負担の上限が定められていて、それ以上の医療費は国が負担する仕組みになっています。
高額療養費制度を利用するには大きく2つ「高額療養費を事後に申告するパターン」と「高額療養費を事前に申請するパターン」があります。
なお、どちらの場合も申請方法は加入している保険組合によって異なりますので、勤務先の人事・労務担当部署や、保険証に記載されている保険組合(保険者)に確認するようにしてください。
高額療養費を事後に申告するパターン
仮に入院や手術などで1カ月の自己負担する医療費が高額になってしまった場合は、支給申請をすることで自己負担上限を超えた分の医療費の払い戻しが受けられます。この場合、高額になった医療費を一旦すべて自分で支払う必要があるため、一時的に大きなお金を用意しておく必要があります。
支給申請の際には、医療機関から受け取った領収書の提出が必要になりますので、紛失したりしないよう大切に保管しておきましょう。
高額療養費の申請に必要なもの
・医療費の領収書
・健康保険証
・印鑑
・振込口座のわかるもの(払戻金の振込先になります)
高額療養費の支給を受ける権利は、診察を受けた月の翌月初日から2年です。
2年以内であればさかのぼって申告し、払い戻しを受けることができます。
高額療養費を事前に申請するパターン
入院や手術の予定があり、あらかじめ医療費が高額になることが予想される場合、自分が加入している保険組合など(保険者)に申請すると「限度額適用認定証」を交付してもらえます。医療費を支払う際、この限度額適用認定証を提示することで窓口での支払いを自己負担限度額で済ますことができるというものです。
これによって一時的に大きなお金を用意する必要がなくなりますので、お金に余裕を持つことができるだけでなく、精神的な負担も軽減されることになります。
限度額適用認定証は、医療費が自己負担限度額を超えるか分からない場合でも申請しておくことは可能なので、入院等の予定があり医療費が心配な場合は事前に準備しておくと安心です。
限度額適用認定証申請に必要なもの
・保険証
・印鑑
なお、【高額療養費制度】を利用する場合は、下記の点に注意してください。
・入院時にかかる「差額ベッド代」「食事代」「保険外の負担分」における自己負担金額は支給の対象外
・月をまたいで医療費がかかった場合、高額療養費の申請対象にならない可能性がある
傷病手当金とは
会社員での仕事中や通勤途中におけるケガの場合は「労働者災害補償保険」いわゆる“労災”が適応されることになり、厚みのある補償が受けられます。
しかし、例えば休日中のドライブで事故にあってケガをした場合や大きな病気をして入院が必要になった場合など、就労中以外の病気やケガなどで仕事を休まざるを得ないないことも時にはあります。
このような場合、厳密には会社から休んでいる間の給与は支払われません。そんな休業中の生活を保障するための制度が、傷病手当金です。傷病手当金は、会社で加入している健康保険から支給されます。
傷病手当金の支給を受けるには4つの条件があります。
①業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
②仕事に就くことができないこと
③連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
④休業した期間に給与の支払いがないこと
上記4つの条件を満たすと、傷病手当金が支給されます。
なお、傷病手当金の金額は、標準報酬日額の3分の2相当の額が支給開始から最長で1年6カ月間支給されます。
申請方法と傷病手当金振込までの流れ
①申込書の準備 | 申込書は各健康保険組合のホームページからダウンロードするか、勤務先に依頼して取り寄せる。 |
②申込書の記入 | 本人(被保険者)が振込希望口座や傷病原因等を詳細に記入する。 |
③会社(事業主)の証明 | 「事業主が証明するところ」に、会社から休職中の賃金計算期間や賃金内訳などについて記入してもらい、初回申請分にはタイムカードなどの添付。 |
④医師等(療養担当者)の証明 | 「療養担当者が証明するところ」に、医師等が傷病名、診療期間、症状や経過などを記入。労務不能と認められた医学的な所見を詳しく記入します。 |
⑤各健康保険組合等への提出 | 本人、会社、医師等の申請書への記入が終わったら、加入する健康保険組合等に申請書を提出、審査が通れば傷病手当金が受給できる |
⑥傷病手当金が振り込まれる | 申請時に記入した振込希望先の口座に振り込まれる。 |
とはいえ長期に渡る入院や大病の場合においては、会社から解雇通告や自ら辞表を出して退職というケースが多いのも現実です。傷病手当金の制度は「休業した期間の給与がない」ことを前提とした所得補償制度ですので、退職した時点で支給資格はなくなってしまいます。
しかし、退職して資格を喪失する日の前日までに、被保険者期間が1年以上あり、傷病手当金を受けている、もしくは受けることができる状態であれば、その後も最大で1年半の間、引き続き支給を受けられます。(資格喪失後の継続給付)
まとめ
高額療養費制度で入院・治療の負担は確かに軽くなります。しかし、高額療養費制度のところで注意するポイントとしてお伝えしましたが、高額療養費制度などの公的医療保険では、差額ベッド代、食事代、先進医療費など保険の対象とならない部分は、全額自己負担となります。
また、治療中でも生活費はかかります。会社員の場合は、先に解説した傷病手当金がありますが、自営業の方や就労のない主婦や学生やお年寄りには傷病手当金は支給されないため、入院・治療に必要なお金と生活費の2つを公的医療保険制度でカバーしようと思っても、カバーしきれないのが現実です。
そこで、必要となってくるのが民間の医療保険です。入院や治療が長引くほど自己負担の額も増えてくるので、病気やケガに不安がある方は幅広くカバーできる民間の医療保険に加入することで将来の安心を得られるのではないでしょうか。
公的な制度も利用できる場合も考慮しながら、保険商品を選ぶことが大切です。
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