退職時に行う健康保険や雇用保険(失業保険)、税金の手続きのまとめ
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最終更新日:2017/03/11
社会保障や公的保険
3月や12月など節目の時期になりますと、急な生活環境の変化や理由で退職や転職をしなければならないこともあると思います。このような時、どのような手続きや制度があるのか気になるところではないでしょうか。
退職した後に手続きをする年金や雇用保険、健康保険などはいざそのときにならないとどのような手続きが必要なのかを知ることが出来ません。
今回は、「すぐに役立つ退職・転職の手続きと4つのしくみ退職・転職の手続きとしくみ」と題して、退職・転職時にすぐに役立つ仕組みを
(1)健康保険
(2)雇用保険
(3)年金
(4)税金
の4つに分けて説明していきます。
(1)健康保険の手続きについて
会社を退職すると「健康保険被保険者保険証」、いわゆる「保険証」を会社へ返却しなければなりません。
健康保険証を返却した時に心配になるのは、その後に病気やケガをした場合にどうなるのか、ということではないでしょうか。
現在、日本では「国民皆保険制度」といって必ず公的な医療保険制度に加入することになっています。公的医療保険制度は、簡単に分けると、
・国民健康保険
・健康保険
の2つに分かれます。
国民健康保険はいわゆる国保と呼ばれるもので自営業者やフリーランスの人などが入る保険、健康保険はいわゆる社保と呼ばれるもので会社員や公務員などが入る保険です。
会社を退職した場合、社保の資格がなくなりますので、新たに医療保険制度へ加入する必要があります。
その場合の選択肢には以下、3つの方法があります。
- ① 退職前の会社の社会保険(社保)の任意継続
- ② 家族の扶養に入る
- ③ 国民健康保険(国保)
上記3つの選択肢があります。
1. 退職前の会社の保険(社保)の任意継続
任意継続は、会社を通さず個人で、退職前の健康保険に継続して加入するものです。退職日までに継続して2カ月以上会社で働いていた人は、退職から2年間、退職前の健康保険を任意で継続することができます。
医療費の自己負担額は退職前と同じとなります。しかし、保険料は会社負担がなくなり、全額自己負担となるため、働いていた時の倍保険料を支払う事となり、割高になります。
手続き方法
任意継続被保険者の手続きは、退職前に加入していた社保での手続きが必要です。また、退職から20日以内に申請が必要になり、任意継続している期間において、万が一、保険料の払い忘れがあった場合には任意継続が終了となりますので注意しましょう。
ただし、やむをえない理由がある場合には継続を認めてもらえますので、詳しくは任意継続している社保に問い合わせることをおすすめします。
2. 家族の扶養に入る
夫や妻、子供など家族が会社で働いていて社保に加入している場合、その家族の扶養に入ることにより、被扶養者として、保険料の負担なく医療保険に加入することができます。
もちろん家族が支払う保険料も、被扶養者が増えたからと言って上がる訳ではありませんので安心して手続きを進めることができます。
家族が社保に加入している場合、次の職につくまで間がある場合などは、とりあえず家族の扶養に入ることで、無駄なお金を支払う必要がなくなるため、家計にとって最も経済的な方法だと思われます。
また、扶養に入る場合、退職後の収入が年間130万円未満でなければなりませんが、これを越えなければ問題ありませんので、超えない範囲であればつなぎとしてアルバイトやパートをすることは可能です。
手続き方法
家族の扶養に入る場合は、家族の会社で手続きが必要になるため、家族から会社へ連絡してもらい、手続きを進めてもらいます。
3. 国民健康保険(国保)
上記の1・2に当てはまらなかった場合は、国民健康保険(国保)へ加入することになります。
手続き方法
国保の手続きは、市区町村の窓口で申請が必要です。申請は14日以内に行います。
退職後まだ健康保険の申請を行っていないうちに、もし病気やケガで医療費がかかったときは、それぞれの健康保険の申請期限内に届け出を行えば、申請の日からさかのぼって健康保険に加入することができます。
とはいっても忘れないうちに、退職後はできるだけ早く手続きをしましょう。
(2)雇用保険の手続きについて
退職後に気になることと言えば、やはり「お金」のことでしょう。
雇用保険には失業給付という失業中の生活を支える制度、いわゆる失業手当と呼ばれるものがあります。失業手当を受けるためには、ハローワークでの手続きが必要になりますが、仕事を辞めただけでもらえるものではありません。
失業給付をもらうためには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
1. 働きたいという意思があり、求職中であるが、失業の状態にあること
2. 離職日以前の1年間に通算して6カ月以上の被保険者期間(雇用保険に入っていた期間)があること
特に重要なのが2になります。
退職日以後、前の勤務先が雇用保険の手続きをするためにハローワークへ必要な書類(離職票といいます)を提出します。この「離職票」が受理され受付されることで、前の勤務先を通じて郵送等の方法で失業手当を受けるための「離職票」が自宅などへ届くことになります。
失業手当を受けるための手続き
失業手当の申請に必要なものは以下の通りです。
①退職時に会社から受け取った離職票と雇用保険被保険者証
②本人の写真
③印鑑
④運転免許証など住所や年齢を確認できる公的書類
⑤本人名義の普通預金通帳
この5つが必要になりますが、ハローワークの職員から必要な書類について必ず説明がありますので、あくまでもその指示にしたがって手続きをするようにしてください。
失業給付の金額は、最低限の生活を保障するものとして、退職前の賃金の5割から8割に相当する額となっています。
支給期間は原則として、退職の日の翌日から1年間となります。
失業給付はすぐにもらえるわけではない
失業給付には、失業給付の受給資格が決まった日から、失業状態の日が7日間なければならず、この7日間を待機期間といいます。
この待機期間を過ぎると4週間に1度失業認定日にハローワークへ行くことになります。ハローワークへ行って失業状態であることが認定されると、認定された日数分の失業給付が支給されます。
給付の日数は失業理由が自己都合か会社都合かで変わってきます。また、自己都合で退職した人の場合は、7日間の待機期間の後に、さらに3ヶ月の給付制限期間があり、すぐに失業給付を受けるとこができませんので注意が必要です。
(3)年金の手続きについて
在職中に社会保険の厚生年金に加入していた方が退職した場合は、厚生年金から国民年金へ種別変更手続きが必要になります。厚生年金の脱退手続きは会社が行ってくれますが、国民年金への切り替え手続きは自分で行わなければなりません。
国民年金への切り替え手続きを行う場合は、市区町村の国民年金窓口(国保年金課など)で申請することになります。
必要な書類は以下の通りです。
①年金手帳
②印鑑
③離職票など退職日が証明できる書類
④身分証明書
もし失業中でお金がなくて国民年金を支払えない場合は、保険料の免除制度もありますので、年金窓口で相談してみることをおすすめします。
配偶者の扶養に入る方法も良い
また、配偶者が厚生年金に加入している場合は、配偶者の被扶養者となることができます。被扶養者になるための条件は以下の通りです。
① 厚生年金に加入している者に扶養されている20歳以上60歳未満の「配偶者」であること
② 年収が130万円未満であること。※失業給付も収入としてみなされますので、ご注意ください。
厚生年金の被扶養者になるには「配偶者」でなければなりません。
たとえば、23歳の子どもが会社を退職して、会社員である父や母の扶養に入った場合でも健康保険は扶養者としての扱いになりますが、国民年金は毎月納めなければなりませんので注意が必要です。
配偶者の勤め先に「社会保険の扶養の追加をお願いします」と言えば、基本的に扶養追加の手続きは会社の方で行うことになっていますので、後は会社で手続きを行ってくれます。
(4)税金の手続きについて
退職すると税金の手続きは自分でやらなければなりません。
具体的には自分で所得税の確定申告を行うことになりますが、多くの場合、退職した会社のその年の収入を申告することで、所得税の還付を受けることができます。
会社員や公務員の場合は、12月になると勤務先が行う「年末調整」にて1年間の税金の精算が完了することになるため、特別に何か手続きが必要なことはありません。
逆に、自営業者や年の途中で会社などを退職し12月31日時点で勤務先が決まっていない人などは、翌年の2月16日から3月15日までの間で確定申告が必要となります。確定申告は、それぞれの税務署によって申告会場が毎年指定されておりますので、あらかじめ申告会場を確認しておくことをおすすめします。
なお、確定申告会場へ持参する必要書類は以下の通りです。
①源泉徴収票
②生命保険料控除証明書や国民年金納付書などの控除証明書
③印鑑
④還付金を振り込んでもらう銀行口座の通帳
年の途中で転職した場合は、前に勤めていた会社からもらった源泉徴収票を新しく勤めた会社に提出すれば、前の会社の分と合わせて年末調整をする流れになります。
まとめ。期限内に手続きを終えることが大切です。
本記事では、退職・転職のしくみと4つの手続きについて説明しました。
退職後は、何かと慌ただしく、また色々な手続きで忙しくなることが考えられます。決められた期限内に手続きをして制度を有効活用することは、新しい環境で安心して生活できることに繋がります。
退職や転職の状況に立った時にスムーズな準備を整えるための知識として少しでもお役立ていただけたら幸いです。
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