リバースモーゲージの基本と活用方法
いわゆる団塊の世代と呼ばれる人たちが老後を迎えていく中で、すでに年金生活を始めている高齢世代が毎日の生活に不安を抱いていることも少なくありません。
ファイナンシャルプランナーという立場でライフプランの事例に目を通していると、若年者と高齢者の年金待遇をはじめ、社会保障制度がまったく異なることから、率直に「これ以上、老後生活に何を望んでいるの?」と疑問を感じてしまうことが時々あるのが私の本音です(その理由には、地方に住んでいることによる金銭格差の違いもあるのかもしれません)。
今回紹介する70代男性(以下、Aさんとします)のケースは、年齢を問わず、将来の老後資金対策の参考になると考えます。
事例より自分はこれからどのような資金対策を行っていく必要があるのか一緒に考えていきましょう。
Aさんの家計の収支状況
71歳のAさんは現在、公的年金収入のみで生活を送っております。妻は6年前に他界し、2人の子どもはすでに独立しています。Aさんの家計データは以下の通りです。
・収入 公的年金収入(手取り金額) 204万円(月額17万円)
・支出1 毎月の支出(生活費など) 156万円(月額13万円)
・支出2 年間の支出(突発的支出など) 84万円(月額7万円)
・差額 年間の収支(収入-支出) ▲36万円(月額▲3万円)
Aさんの資産状況で対策方法が異なる
Aさんが上記のような収支状況であった場合、収入が支出よりも下回っていることからあまり健全とは言えません。
しかし、貯蓄の残高が仮に1,000万円あったとしたらどうでしょうか?
一生涯を通じて資金が枯渇することは余程の理由がなければないと予測されます。
逆に、もし貯蓄の残高が十分ではない場合には早急な対策が必要になってきます。71歳という年齢を考慮すると以下のような対策があります。
- 年間の支出(突発的支出)を抑える
- 可能であれば、軽作業など体に無理のない程度の仕事をして収入を増やす
- リバースモーゲージの活用を検討する
などが一例として挙げられます。
きっと多くの人が「リバースモーゲージってなに?」と思われているのではないでしょうか。
このリバースモーゲージについてわかりやすく解説していきます。
リバースモーゲージとは
リバースモーゲージとは、土地や建物を担保にすることで銀行などの金融機関から生活費やリフォームなどの目的で融資を受けることをいいます。
そして、死亡したときに担保とした土地や建物を売却することで融資金を一括返済するといった仕組みになっています。
リバースモーゲージは、現在注目されている新しい老後生活の形ではありますが、問題点や注意点も多く存在します。
リバースモーゲージの問題点・注意点
ここからはリバースモーゲージの問題点・注意点を紹介・解説していきます。
土地や建物の担保価値が無ければそもそも利用できない
前項でリバースモーゲージの仕組みを解説しましたが、最終的に土地や建物を売却した資金で融資金を一括返済する仕組みであるからこそ、返済できる担保価値が求められるのは当然のことでしょう。
各金融機関によって担保条件が異なるといった特徴があります。
融資が途中でストップする可能性がある
担保として提供した土地や建物の価値が下落してしまった場合には、結果として融資金を一括返済できないことに繋がるため、融資が途中でストップする可能性があります。
土地や建物を売却しても一括返済に充当できないリスクに備えて、貯蓄やその他の不動産、その他の金融資産を保有していることも求められる場合があります。
家族の問題が山積みである
Aさんはたまたま一人暮らしですが、妻と二人暮らしといった場合にリバースモーゲージを活用することで住む家が無くなってしまうことも否めません。
これは、金融機関との契約で決定される内容となっています。
さらにリバースモーゲージを利用するには法定相続人全員の承諾が必要となるため、誰かが反対した場合には成立しません。
今後はリバースモーゲージが一般的になる?
前項ではリバースモーゲージの問題点・注意点について紹介・解説しましたが、現在の若年者が高齢者になる数十年後には、リバースモーゲージがもっと馴染み深いものになっている可能性があります。
1つはっきりしていることは、リバースモーゲージの仕組み上「不動産価値の高い物件を若いうちに取得していること」が求められそうです。
一生涯において有効活用できる可能性があるからこそ、立地条件や需要といった不動産を見る目を養っておく必要があると考えます。
また、老後年金を増加させる方法は「貯蓄」「個人年金保険」「確定拠出年金」「投資」「付加年金」「国民年金基金」「厚生年金基金」など多数存在します。
これらの中から活用できるものを率先して取り入れることも必要であることは言うまでもありません。
老後の資金対策は、まず将来の収支予測から
70代男性の切実な悩みから老後の資金対策を考えてみましたが、みなさまはどのように感じられたでしょうか。
職業によって違いはあるものの、Aさんが受け取っている公的年金額を今の若年者のみなさんが受給できる保障はどこにもありません。
正直、公的年金だけでは厳しいと予測します。
現在と老後の生活スタイルは同じではないと思われますので、あくまでもどのくらいのお金が老後資金としてあったら安心か予測し、それを確保するために何をいくら用意したらよいのか考えることが大切です。
(たとえばねんきんネットでは将来の概算年金を確認することができるので、個人的にはおすすめしたいツールです)。
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