年末調整で知っておくべき所得控除のすべて
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税金や節税
会社員や公務員の皆さんは、1年に1回の大きなイベントの1つに「年末調整」があげられると思います。
毎年、12月頃になると、「いつもの2枚の紙(給与所得者の扶養控除等(異動)申告書と給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書)を勤務先から渡されて記入するわけですが、1年に1回の大きなイベントなので、どのように書くのか忘れてしまっている人も少なくありません。
しかし、この用紙の内容に記入漏れがあると、税金の優遇を受けられないこともありえます。
今回では、年末調整の用紙に記入することによって適用される所得控除をすべて紹介していきます。
配偶者控除 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
配偶者控除の適用を受けるためには、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書に、
・配偶者の氏名
・マイナンバー
・生年月日など
を記入する必要があります。
いわゆる、年収103万円の壁とよく言われますが、たとえば、パートなどで家計を支えている配偶者の給料が年間を通じて103万円以内であれば配偶者控除の適用が可能です。
扶養控除 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
扶養控除は、学生の子どもを扶養している場合や高齢の両親などを扶養している場合に適用される所得控除です。
扶養している人の年齢によって扶養控除の金額が異なる特徴があり、19歳から22歳までの子どもを扶養している場合が最も扶養控除の恩恵が受けられる特徴があります。
障害者控除 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
障害者控除とは、本人や扶養している家族が障害を患っていて、税法で認めている障害の程度に該当している場合は、障害者控除の適用が受けられるという特徴があります。
さらに重度の障害のときは「特別障害者」といって、さらに所得控除の金額が大きくなり、結果として納めるべき税金が大幅に軽減される特徴があります。
寡婦控除・寡夫控除 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
寡婦・寡夫とは、配偶者と死別や離婚などで婚姻関係が無くなってしまった人のことをいい、寡婦は女性、寡夫は男性を表しています。
寡婦控除と寡夫控除が適用されるための条件が大きく異なっている特徴があり、女性が寡婦控除を受けるためには、配偶者と死別した場合や離婚して子どもを扶養している場合などに適用されます。
いちおう所得制限があるのですが、たとえば、女性社長や会社の役員といったレベルの女性の方でなければこの所得制限にあたることはないと考えて差し支えないでしょう。
また、男性が適用される寡夫控除の場合は、配偶者と死別や離婚などいずれの場合も「子どもを扶養していること」が控除の条件として確実に求められます。
年内に配偶者と離婚して子どもを扶養しているといった場合は寡夫控除が適用できる可能性がかなり高いでしょう。
勤労学生控除 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
勤労学生控除とは、年末調整する本人が「学生」であり、給与所得などの所得があることなどが適用要件となっております。
さらに国税庁では、勤労学生控除の適用のために合計所得金額が65万円以下で給料以外の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であることと解説しており、具体例として、給与所得だけの人の場合は、給与の収入金額が130万円以下であれば給与所得控除65万円を差し引くと所得金額が65万円以下となると述べています。
大学生などがアルバイトなどで年間130万円の収入を得た場合には勤労学生控除の適用が受けられ、結果として税金を納めなくともよいといったメリットがあります。
ただその一方で、扶養している両親にとっては扶養控除の適用が受けられず、かえって税負担が大きくなってしまう恐れがあるので、学生も年間103万円を超えないようにアルバイトの量を調整するのがベストな選択だといえるでしょう。
生命保険料控除 給与所得者の保険料控除申告書
生命保険料控除とは、終身保険、定期保険、医療保険といった生命保険に加入している人が適用できる所得控除で、所得税や住民税などの納税負担を軽くする効果があります。
なお、ここで使う計算式は、給与所得者の保険料控除申告書に記載されておりますので、秋ごろに生命保険会社から郵送されてくる生命保険料控除の金額に従って計算するようにしてください。
地震保険料控除 給与所得者の保険料控除申告書
地震保険料控除とは、住宅などの火災保険に加入している際にセットで加入している地震保険料に相当する分が、地震保険料控除として所得税や住民税の金額を軽くする効果があります。
地震保険料控除証明書も生命保険料控除証明書と同様、秋ごろに損害保険会社から郵送されてきますので、その地震保険料控除証明書に従って給与所得者の保険料控除申告書へ記入するようにしてください。
社会保険料控除 給与所得者の保険料控除申告書
社会保険料控除とは、国民年金保険料や国民年金基金の保険料を支払った場合に支払った金額のすべてが社会保険料控除として所得税や住民税の納税負担を軽くする効果があります。
たとえば、大学生、短大生、専門学校生で20歳以上の子どもの国民年金保険料を代わりに納めた場合には、その金額を社会保険料控除として適用することも可能ですので、忘れないように添付、記入したいものです。
税金の軽減効果が大きい項目だけに、不安な場合や疑問がある場合は、勤務先の経理や総務担当者に尋ねてみることをおすすめします。
小規模企業共済等掛金控除 給与所得者の保険料控除申告書
小規模企業共済等掛金控除とは、会社員や公務員の方は、あまり適用する例が見られないと思われますが、平成29年1月から確定拠出年金の加入が公務員や専業主婦(主夫)にも拡大されたことを受けて、今後はこの項目に記入したり必要書類を添付する場合も増えてくると思われます。
小規模企業共済等掛金控除も社会保険料控除と同じように、支払った金額のすべてが小規模企業共済等掛金控除として税負担の軽減効果があります。
たとえば、若年者の皆さんで老後の生活資金が年金だけでは不安だと感じている人は、確定拠出年金に加入して小規模企業共済等掛金控除の適用を受けながら、老後生活資金を貯める方法も有効でしょう。
配偶者特別控除 給与所得者の配偶者特別控除申告書
配偶者特別控除とは、配偶者の給与年収が103万円を超えてしまった場合に、適用されなくなってしまう配偶者控除の代わりに適用できる所得控除で、年収の金額によって適用される控除が徐々に逓減していく特徴があります。
配偶者特別控除は、仮に給与年収だけの配偶者が103万0001円~140万円9,999円までの人が適用することができます。
実際に書類などを見て配偶者特別控除が適用できるかどうかをしっかりと確認することが望ましいことから、こちらも勤務先の経理や総務担当者に尋ねてみることをおすすめします。
まとめ
今回は、年末調整の時期だからこそ知っておきたい所得控除のすべてと題しまして、「年末調整で適用することができる」所得控除を紹介させていただきました。
なお、雑損控除、寄附金控除、そしてよく聞く医療費控除は、年末調整ではなく確定申告でなければ適用ができませんので、その点はご注意ください。
勤務先によっては、すでに年末調整の書類提出が締め切られている場合もあると思われますが、仮に年末調整で適用ができなかったとしても確定申告をすることで適用が可能になっています。
年末調整は、1年に1回の税金精算といった大切な事務手続きになりますので、普段の年と何か特別に変わったことがあった場合は、すぐに勤務先の経理や総務担当者に尋ねてみるとよいでしょう。
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