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健康保険の「被扶養者が受けられる給付」まとめ

健康保険

会社員の夫、専業主婦の妻。
このような世帯の場合、夫は健康保険の「被保険者(本人)」、妻は夫が加入する健康保険の「被扶養者(家族)」ということになります。
健康保険の「被保険者」と「被扶養者」では保険給付の内容に違いがあるのでしょうか。

本記事では、普段はあまり気にしない健康保険の「被扶養者」が受けられる給付についてまとめました。

「被扶養者」が受けられる保険給付一覧

専業主婦の妻や子など、健康保険の被保険者の収入によって生活している被扶養者が受けられる給付は以下の通りです。

<病気やケガのとき>家族療養費

家族療養費とは、扶養されている妻などが病気やケガなどで治療を受けた場合に適用される保険給付のことをいいます。

たとえば、風邪などで病院にかかった場合や医者から処方された薬の代金として、その3割を窓口で負担していますよね。

本来は10割すべての医療費を負担しなければならないのに対して、3割分の医療費の負担で済んでいる。これは、残りの7割分が家族療養費として健康保険から給付されているということです。

<病気やケガのとき>入院時食事療養費

病院に入院すると、入院中の食事療養にかかる費用として1食につき360円(1日1,080円)を自己負担することになっています。
この自己負担額を超えた分が入院時食事療養費として支給されます。

<病気やケガのとき>家族訪問看護療養費

家族訪問看護療養費とは、たとえば、がんの治療を自宅で行っているようないわゆる「在宅療養」などで、指定訪問看護事業者から訪問看護サービスを受けた場合の医療費負担が3割となる保険給付のことをいいます。

先に解説した家族療養費と同じように、本来ならば10割すべての家族訪問看護療養費を負担しなければならないところ7割が保険給付で賄われているということです。

<病気やケガのとき>家族移送費

家族移送費は、妻や子が病気などで移動が困難な状態になり、一時的・緊急的必要があるとして医師の指示で移送された場合に、その移送費が現金給付されるものです。

給付される金額は、最も経済的な通常の経路、および方法により移送された場合にかかる費用に基づいて算定した範囲ならば、実費が給付されます。

ざっくり解説しますと、たとえば命に関わるような緊急事態が発生し、ドクターヘリなどで遠くの病院へ移さなければならない場合の交通費が家族移送費として支払われるといったイメージです。

<出産したとき>出産育児一時金

被扶養者である女性が出産した場合には、1人につき「42万円」が家族出産育児一時金として支給されます。

現状では、あらかじめ子どもを出産する病院で手続きを済ませ、実際にかかった出産費用と家族出産育児一時金を差し引きし、足りない部分のみを支払うという流れが一般的になっています。

逆に出産費用が42万円を下回った場合には、42万円から実際にかかった費用を差し引いた残りの額を後日に受け取ることができます。

<死亡したとき>家族埋葬料

被扶養者が亡くなった場合、埋葬のための費用として「家族埋葬料(一律5万円)」が被保険者に支給されます。

仮に被保険者が亡くなった場合は、扶養されていた妻など、被保険者の埋葬を行った人に対して「埋葬料(一律5万円)」が支給される仕組みとなっています。

被扶養者の保険給付で押さえておきたいポイント

前項で紹介した被扶養者の受けられる保険給付については、名称は異なるものの基本的な給付内容は被保険者のものと同じです。

ただし、病気やケガで会社を休んだときにもらえる「傷病手当金」、出産のため会社を休んだときにもらえる「出産手当金」などは、被保険者のみが受けられる給付となっています。

生命保険の加入や見直しをご検討の際は、この被扶養者の保険給付を加味して無駄なく備えるようにしましょう。

なお、被保険者である夫が退職や失業などで健康保険の被保険者でなくなった場合は、被扶養者である妻や子も健康保険の被扶養者から外れることになるため注意が必要です。
その際は、早めの保険の切り替えや仮保険証の発行依頼など、状況に応じた対応が求められるためあらかじめ調べておくことをおすすめします。

まとめ

被保険者と被扶養者では受けられる保険給付に大きな違いがないということがおわかりいただけましたか。
たとえ健康保険の被扶養者から外れ、国民健康保険に加入した場合でも保険給付の面で極端に異なることはありません。

また、特殊な事情などで被扶養者の関係に変化をもたらすことになった場合は、勤務先や役所に適宜問い合わせて確認するようにしましょう。